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日本の町工場の技術力、健在なり

 ちょっといい話をご紹介したい。大阪市生野区でウエットスーツ素材、複合特殊ゴム製品などを手がける「山本化学工業」の山本富造社長の話である。

 山本氏は以前、医療用のX線遮蔽エプロンの製造を手がけたことがあった。さらに、1980年代に「中性子爆弾」の脅威が叫ばれていたころ、欧州で持ち上がった遮蔽シェルター開発計画にかかわったこともあった。

 その経験から、山本氏は福島第1原発事故を伝えるテレビを見てすぐにわかった。現場に突入する東京電力の作業員や自衛隊、警察、消防の隊員が着用している白い防護服は「放射性物質の付着を防ぐ」ことはできても、「放射線を遮蔽する」ことはできないのだ、と。

 そこで、山本氏は決心した。放射線を遮蔽する素材を作ろうと。4月のことだった。

 調べてみると、放射線を遮蔽する防護服は、あるにはあった。だが、遮蔽性能が低い上に、「硬くて重い」。着用すると肩が回らなかったり、歩けなかったりする。これでは「服」ではない…。

 山本氏が開発したのは、特殊な合成ゴムに重金属を練り込んだ素材。5月にテストを開始し、約2カ月でとりあえず製品化にこぎ着けた。

 だが、別の問題もあった。どうやって売り込むか、いや、使ってもらうか、ということだ。

 売り込み先は当然、東電ほか原発事故関連の企業、団体だ。しかし、東電の担当者と「東京でお会いしているときは、あんまりウエルカムというかんじではありませんでしたね」と、山本氏は率直に振り返る。わからないでもない。鉄の結束で知られた「原子力村」からみれば、山本氏はよそ者のひとりにすぎない。

 ところが、現場に行くと空気が違った。「すぐよこせ」というわけだ。なにしろ、手持ちの放射線遮蔽服は着用すると立ったまま手足が動かないような代物。放射線に立ち向かう現場では、旧来の縄張り意識など消し飛んでいた。

 山本化学工業は、現時点では数十着の遮蔽服を納めただけだが、一方で性能はどんどん向上して、放射線を75%カットできるまでになっているという。山本氏の製品は、長く続く事故対策において重要な役割を果たすことになるかもしれない。

 原発事故で「原子力村」の権威はあとかたもなく消え去ったが、日本の町工場の技術力は健在なのだ。(フジサンケイビジネスアイ 編集長 松尾理也)
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